日本刀は武器でありながら、守り刀のように神格的な要素をもつ不思議な存在です。
武器としての用途を失ってもなお、その美しさから美術工芸品として現在でも高価なものに変わりがないのが面白いと思います。
この本は、日本刀と日本人の関わり方の一つとして「贈答」に終点をあてて8つの章にわけて語られています。私が日本刀に興味を持ち始めて間もないころに読んだのですが、日本刀の知識などなくてもとても面白く読むことができました。
有名な武将や、刀に伝説があったり、妖怪が出てきたり、実在する時代にファンタジーが盛り込まれているので、日本刀の知識と一緒に歴史にもまた興味をそそられます。
読んだ中で、私が印象に残った刀は『名物分部志津』です。この時は、ほとんど日本刀を目にしたことがなく、こんなヘンテコな模様(皆焼のような)が刀剣のイメージになかったのです。
そりゃもうインパクト大です。
その模様はヘンテコといっても、著者の例えのとおり、入道雲のようで、シロクロの写真ながら美しいなぁ〜と見惚れました。失敗作だとのことですが、成功は失敗のもとともいいますしね。実戦向きではなかったのかもしれませんが、魅力的な姿となり後世に残ったことは有難いことだなぁと思います。
私が日本刀にハマった時期が、ちょうど日本刀の大ブームと重なり、いまではあっちこっちで大切に保管されていた沢山の刀達を鑑賞することができました。
ただ日本列島津々浦々行く資金は乏しく、いまだにこの分部志津にで会えないままです。
いつか機会が巡ることを祈って…
『名刀と日本人:刀がつなぐ日本史』
著者:渡邉 妙子
お読みくださりありがとうございました